『分かり合うための言語コミニュケーション』への質問 ~第4回・本来の意味~

2022年1月21日で取り上げた「分かり合うためのコミュニケーション」。

コミニュケーションの質を高める有効な方法として、
『正確さ』『分かりやすさ』『相応しさ』『敬意と親しさ』の4つの要素が 報告されています。
※文化審議会国語分科会の資料で (分かりあうための言語コミュニケーション(報告))

報告書には、実際のコミニュケーションで、『例えば、こんな時どうすればいいの?』という場面に、4つの要素を活用して質を高めることが出来るとする質疑応答の章もありました。

35の質疑応答の中から、ピックアップして、ご紹介していきたいと思います。
第4回目(10回シリーズ)は、『表現について誤っているのでは感じた時』を取り上げます。
※第1回からは本ブログのタグ:コミニュケーションに格納しています。

普段耳にしている言葉に違和感を覚えることがあります。昔習った意味と、現代の解釈。辞書で調べると全く違う意味で使われていたりします。間違いとして正すべき・・・?

言語コミュニケーションにおける Q&Aの中から

設問 「監督が選手に檄(げき)を飛ばした。」といった言い方は、間違った表現だと聞いたことがあります。よく見聞きする表現なのに、誤っていると言えるのでしょうか。(Q8/35中)

元々、「檄を飛ばす(リンク:文化庁)」は、『自分の考えを広く伝え、同意を求めたり決起を促したりする』という意味の慣用句です。しかし、現在では『元気のない者に刺激を与えて活気付ける』の意味で使われることが少なくありません。

回答 本来の意味を知っている時、違和感を覚える言葉や表現に接すると、平素でいられないことがあります。ときに居心地の悪い気持ちになるかもしれませんね
言葉】は、その時代や、単語の持つ別のニュアンスなどで拡大解釈されたりして「成長」しています。社会通念としての使われ方が大半を占めている場合や、辞書等でも取り上げられているような場合に、それを誤りであると考える必要はないでしょう。
逆に自分が発信する時、本来の意味を大切にする人がいることに留意する必要があります。

解 説

次の表を見てください。

新しい用法が多数派になっているそのほかの言葉

昭和の時代に教育を受けてきたものでも、「本来の意味」より「新しく生じた意味」として認識している言葉が多くあります。
これらはほんの一部で、文化庁の国語施策のカテゴリの、「言葉のQ&A」(まとめ)というページにも言葉の変遷を知ることが出来ます。興味がありましたら、覗いてみると面白いです。

言葉は成長変化を遂げるものと認識したほうがよさそうです。言い回し、単語は、仏教・伝統芸能・天候・逸話からなど言葉はさまざまなきっかけで生まれています。

生まれたきっかけは、表現の難しい事柄。例えば先の票の右側の解釈が左列の数文字であらわされるように、簡単にまとめられる利便性に関係します。

本来の意味でつかわれていたものが、多数の人、時間の中で用途が広がり、本来の意味よりも浸透した意味が定着した経緯があります。

多くの人が同じ意味として捉えることが出来る言葉であるなら、辞書通りの厳格さで正す必要はないでしょう。

例えば、
本活動名『アライエール』という言葉も、ARISE [味方](アライズ) と YELL [応援](エール) の英単語を融合させて作った言葉です。
ただ、この「YELL」 という単語の本来の訳は「声を上げる」など動詞で、単体で使用することはありません。
しかし、スポーツの世界から始まった、『エール』という言葉は、現在では、本来の意味から、単体で「応援」あるいは「励まし」としての言葉に定着しています。
定着している意味によって、伝えたいことを表現してくれることから、『エール』という言葉を使用しました。

そうはいっても気持ちが悪い

寛大な心で接していても、本来の意味から逸脱していたり、いわゆる「ら」抜き言葉に嫌悪感を感じることも事実。ここは「正義」の問題ではなく、「気持ち」の問題が関わってきます。伝え合うコミュニケーションのコツとしては、「訂正する」のではなく「補足する」関りを持てば気持ちを治めることが可能です。

「今の言葉、本来の意味から成長して今の解釈になっているみたいだけれど、実は〇〇という意味があるみたいだよ。」

訂正できないモヤモヤを抱えているより、表現(アウトプット)することで、会話の幅も広がるし、自分の気持ちを収めることもできます。

言葉のQ&Aから

たとえば、

「さわりだけ聞かせる」の「さわり」とは?
 音楽や物語の最も感動的な部分,話や文章の要点などという意味。詳細は⇒こちら

「役不足」とは,何が足らないのか?
答 「役不足」とは,その人の能力に対して,与えられた役や役目が軽すぎることを言う言葉です。詳細は⇒こちら

どちらも、現在受けとめられている意味と全くの反対ですね。

雑学:業界用語

業界独特の言い回しを「業界用語」といいます。
一般的につかわれていた言葉を利用して、業界の作法やルールなどが表現された用語です。ここでも、「簡単に共通する表現に変換できる利便性」が由来となっています。

【新 聞】
・大目玉:紙面で二、三段抜きの大きな広告のこと
・肩:記事のうち、二番目に重要なニュースが掲載されるところ
・トロッコ:新人記者のこと。「記者」と「汽車」をかけて本物の記者とは程遠いと冷やかしで
・泣き別れ:複数段にまたがる記事。読者に上段で記事が終わったと勘違いされる可能性がある。

【出 版】
・赤(赤字):誤字や誤植など訂正するために書き込んだ文字や記号
・ゲタ:所要の活字がないときに仮に入れておく伏字「〓」下駄の歯の形に似ていることから
・閉じる:公正で、ひらがなを漢字にすること。逆は 開く
・リード:雑誌や新聞などで、記事の冒頭にある内容を簡潔に述べた短い文章のこと

【テレビ】
・仕出し:群衆役のエキストラのこと
・撮(取)って出し:速報性が求められる場合、事前に収録した映像を編集せずにそのまま出すこと。
・巻き:番組撮影で、進行を急がせる合図のこと。
・笑う:撮影にいらなくなった小道具などを片付けること

【旅館・ホテル】
・ウォークイン:予約なしの飛び込み客のこと 英語のwalk inから
・お泊り:前日に仕入れた売れ残りの魚のこと。板前が使う言葉。
・シルバー:スプーンやフォーク、ナイフなどの総称。銀製品以外でも使う。
・ばっかり:食事はよそで済ませてくる宿泊だけの客のこと。

【銀 行】
・落ちる:当座預金(手形・小切手)の決済が完了すること。
・焦げ付き:貸したか金が返済不能となって回収できないこと。またその金。不良債権。
・締め上げ:銀行の一日のいろいろな勘定を集計すること
・日本茶:あやしい客。あやしい客が来たときに「日本茶お願いします」など

【その他】
・油紙:口が軽いこと。ぺらぺらとよくしゃべること《警察》
・いくらちゃん:「いくら」と値段ばかり聞いて買おうとしない客《デパート》
・うさぎ:盗聴器のこと。よく聞こえるウサギの耳に例えて《探偵》
・梅春物:春物の色のついた冬服のこと。十二月から一月に売り出される春物一弾。

業界用語。調べると面白かったので、つい行数が多くなりました。
業界用語は冷やかしや直接的な表現を避ける言い回しが多いという印象です。銀行の「日本茶」などは今では使っているかも不明。日本茶が出てきたからと言って焦る必要はないかもしれません。

今回の質問で、4つの要素として、おさえたいポイント。 意識したい5つの要素から
『正確さ』①意図したことを誤りなく伝える言葉を用いているか②ルールにのっとって言葉を使っているか⑤情報は目的に対して必要かつ十分か

出展
文化庁
https://www.bunka.go.jp/
文化庁/「分かりあうための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2018/04/09/a1401904_03.pdf
パンフレット:「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/wakariau/pdf/r1403493_02.pd
文化庁/「げきを飛ばす」の意味
https://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_09/series_08/series_08.html#:~:text=%E3%81%92%E3%81%8D%E3%82%92%E9%A3%9B%E3%81%B0%E3%81%99%20%E4%BA%BA%E3%80%85%E3%82%92,%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

新しい用法が多数派になっているそのほかの言葉』の表にあるように、日常認識されている意味と本来の意味と随分違っていることが判りますね。自分も「新しく生じた意味」の方が馴染みがあります。
中核にある意味は残ったまま、用法が拡大したり、一部の用法だけに限って用いられるようになったりしたものが多いとも考えられます。(資料より)
本来の意味を知っている人からすると、表現が広がる、用途が広がって使われることに違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。

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