『分かり合うための言語コミニュケーション』への質問 ~第8回・相応しさ~

コミニュケーションの質を高める有効な方法として、
『正確さ』『分かりやすさ』『相応しさ』『敬意と親しさ』の4つの要素が 報告されています。
※文化審議会国語分科会の資料で (分かりあうための言語コミュニケーション(報告))

報告書には、実際のコミニュケーションで、『例えば、こんな時どうすればいいの?』という場面に、4つの要素を活用して質を高めることが出来るとする質疑応答の章もありました。

35の質疑応答の中から、ピックアップして、ご紹介していきたいと思います。
第8回目(10回シリーズ)は、『相応しい』について取り上げます。
※第1回からは本ブログのタグ:コミニュケーションに格納しています。

自分が育った環境や経緯、自分が選択してきた事象などで、私たちは語彙力を身に着けます。同じ家で育ったきょうだいでさえ、性格や価値観は違います。多様性の時代に自分の価値判断のみで発する表現が果たして万人に好意的に受け取られるかは難しい判断です。

双方が満足するようなコミュニケーションには、その場での「相応しい表現」を意識する必要がありそうです。

言語コミュニケーションにおける Q&Aの中から

設問 言語コミュニケーションの質を高める上で「相応しさ」に配慮するとは、どういうことでしょうか。(Q24/35中)

回答 伝え合う相手の気持ちを意識し、その表現が適切なのかと配慮する必要があるということです。
具体的には、相手の気持ちを思いやる想像力によって、相応しい言葉を選択し表現するというものです。

解 説

例えば、台風が多い年を「台風の当たり年」と表現したりしますが、
「当たり年」は本来「縁起の良い年」「幸運に恵まれた年」のことを意味します。

台風という被害が伴う現象を、たとえ比喩にせよ、「縁起の良い」の意味をもつ言葉で表現するのは不適切と考えましようということです。

ましてや、台風の被害に苦しんでいる地域の人の心情を傷つけるおそれがあり、注意が必要なのです。

言葉や表現する意図に問題がなくても、使用する場面や状況によっては、不快な思いをさせたり、違和感を抱かせたりする場合があります。

言葉の意味は、世相や流行などで拡大解釈がなされる場合があり、自分が慣れ親しんだ意味が、自分の意図とは異なった意味で受け取られる可能性を含んでいます。
関連記事:第4回目『分かり合うための言語コミニュケーション』への質問 ~第4回・本来の意味~

なら、特定の言い回しをリストアップして、それさえ避ければ大丈夫。というものでもありません。言語コミュニケーションは、相手(聞き手・読み手)の気持ちにどこまで寄り添えるかが常に試されているとも言えます。ふさわしい言葉・表現を選択するには、相手を思いやる注意力が試されます。

思いやる「注意」?

「注意する」ということは、想像力を働かせることです。

車の運転時のKYT(危険予知訓練)に参加されたことはありますか?危険を回避するためには、交差点や危険な箇所で「大丈夫にちがいない」という自分の思い込みを避け、「~かもしれない」と外部(他者)へ視点を移動し、そこに潜む危険を想像(予知)しましょうというものです。

コミュニケーションにも同じことが言えるのです。
「長年の経験でこの表現や言い回しが受け入れられてきたのだから、問題はないはず。」
「ちょっとした場面。そんな大げさに考えるものではない」
「いつだってこの表現で乗り切ってきた」

と自分に言い切る感覚「!」を、他者を意識した「?」に変えてみることが想像力なのです。

例えば、「長年の経験だからこそ、色あせていないかな?どうだろう?この表現で伝わるだろうか?」
例えば、「些細な場面でも相手が誰でもこの表現は良かったかな?」
例えば、「どんな場面でも影響はないだろうか?」 このように。

自分の想像力を駆使するだけでなく、時に相手の反応を観察することで、相手に沿った対応を導き出すことが出来ます。この場合にはノンバーバルコミニケションが役立ちそうです。

関連記事:ノンバーバル ~非言語のコミニュケーション~

視点を変えて「相応しさ」が必要な場面を考える。

「正確さ」と「分かりやすさ」を両立させたいとき、「相応しさ」が緩衝材になってくれます。

仕事上の評価、経済状況、病状など、相手が置かれている状況によっては、伝えにくいこともあります。
「正確」や「分かりやすさ」は簡潔で伝わりやすい一方、相手の気持ちを察する点に関しては、おろそかになりがちです。不要に傷つけ、その後に影響しかねないとも限りません。

人間は機械ではありません、非常に徹することもできれば、判断が鈍りパフォーマンスが落ちることもあります。
その多くは不必要な一言が心に刺さったりすることが原因と考える識者も多数です。

こちらの言い分がたとえ正確で、明確であっても、相手が心を閉ざしたら伝える内容に意味は持たなくなり、「円滑なコミニュケーション」は望めません。

言いにくい場面ばかりとは限りませんが、「正確さ」や「分かりやすさ」と「相手の気持ちをくむ」ことを両立させるには、「相応しさ」を使って、緩衝材とな表現を組み込んでみる、言い回しを試みる、省略で和らげるなど、
相手の様子を見ながら(想像しながら)徐々に最終的な正確さに行きつく伝え方を意識すると良いでしょう。

おまけ

厚生労働省のポータルサイト「職場の安全サイト」というコンテンツに危険予知訓練:KYTのことが取り上げられています。

職場のあんぜんサイト
ホーム > 安全衛生キーワード > 危険予知訓練(KYT)

KYT4ラウンド法と呼ばれ、危険予知訓練の進め方が示されています。
1R どんな危険がひそんでいるか
2R これが危険のポイント
3R あなたならどうする
4R 私達はこうする

通常のKYTのほか、コミュニケーション以外でも利用できそうですね。

今回の質問で、4つの要素として、おさえたいポイント。 意識したい5つの要素から
『正確さ』③誤解を避けるよう努めているか
『相応しさ』①相手が理解できる言葉を互いに使っているか②目的に調和した、感じの良い伝え合いになっているか③場面や状況に合った言葉や言葉遣いになっているか

出展
文化庁
https://www.bunka.go.jp/
文化庁/「分かりあうための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2018/04/09/a1401904_03.pdf
パンフレット:「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/wakariau/pdf/r1403493_02.pd
職場のあんぜんサイト> 安全衛生キーワード > 危険予知訓練(KYT)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo40_1.html

言葉選びは非常にデリケートです。そんなに色々考えていたら、会話もできない。という声が聞こえてきそうです。良く判ります。といって、消極的になる必要はありません。
会話する時、相手が「安心した表情」や「納得した頷き」「にっこり笑って」くれたら、嬉しくなりますね。
同じことを伝えるにも工夫次第で、「安心」も「笑顔」も引き出せます。引き出せるんです(^-^)

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