『分かり合うための言語コミニュケーション』への質問 ~第9回・敬意と親しさ~

コミニュケーションの質を高める有効な方法として、
『正確さ』『分かりやすさ』『相応しさ』『敬意と親しさ』の4つの要素が 報告されています。
※文化審議会国語分科会の資料で (分かりあうための言語コミュニケーション(報告))

報告書には、実際のコミニュケーションで、『例えば、こんな時どうすればいいの?』という場面に、4つの要素を活用して質を高めることが出来るとする質疑応答の章もありました。

35の質疑応答の中から、ピックアップして、ご紹介していきたいと思います。
第9回目(10回シリーズ)は、『敬意と親しさ』について取り上げます。
※第1回からは本ブログのタグ:コミニュケーションに格納しています。

普段のコミュニケーションで、相手と対峙するとき、どんな気持ちが起こっているでしょうか。情報の伝達のみの会話は よほどの社交辞令でない限り、成立するのは難しいかもしれません。その社交辞令にあっても、心の奥底では”無難に”という気持ちがはたらきます。会話によってもたらされる「何か」を考えてみましょう。

目次

言語コミュニケーションにおける Q&Aの中から

設問 言語コミュニケーションの上で「敬意と親しさ」を意識するとは、どのようなものですか。(Q30/35中)

回答 相手に対する「敬意」や、「親しさ」をこめた言葉と態度の バランスを意識する状態です。
このような状態が保たれると、伝え合う人同士で、心地良く感じる距離感が生まれてきます。
心地よく感じる距離感は、会話自体を弾ませ、その後の関係性にも影響を与える可能性が期待できます。

解 説

伝え合う(コミュニケーション)場において、私たちは相手と対峙します。
その時、どのような気持ちが沸き起こっているでしょうか。

人と接しているときに心の中で思うこと

文化審議会国語分科会の資料 (分かりあうための言語コミュニケーション(報告)) の中に
『相手と接する際、わたしたちはどのような気持ちをもつのか』という設問に関するデータが紹介されています。ここでは、結果のグラフを紹介します。

【相手と接する際の気持ちのあり方】における 設問結果グラフ

設問:関係性が、(1)親しい友人、(2)同僚や近所の人、(3)初めて会った人 に対してどういう気持ちを持つか。
気持ち:a『理解されたい』b『立ち入られたくない』c『どちらでもない』d『分からない』

資料内世論調査

結果の数値からみえることは、

(1)親しい友人・・理解された気持ちが多数を占め、関係性の持続を期待して、発展を望む傾向がうかがえます。

(2)同僚や近所など・・立ち入られたくないけれど、仲良くなったほうが良いとも感じている。あるいは逆に、仲を深めたほうが良いと考えるが、一定の距離は保っていたい。

(3)初めて会った人・・関係性の可能性は未知でも、人間関係が増えることには消極的

関係性が出来ている順に、理解されたいという気持ちが高い結果なのは当然と言えますね。
関係性が出来ているというのは、接することで親しみがわき、心が許せる相手に変化した結果と説明できます。つまり、気持ちの距離感が近いということにつながまりす。
関係性を作ったり、持続する時に生まれる「親しさ」は、心の距離間でもあるといえます。

心の距離が近くなっていく物語

「星の王子さま」(Wikipediaへ)というお話は読まれた方も多いと思います。
フランス人飛行士サン・テグジュペリが書いたお話で、1943年にアメリカで出版されました。

「大切なものは目に見えないんだ」というメッセージが込められていると言われます。

全く知らなかった相手。最初は変。むしろ苦手だと思った相手が、いつの間にか特別な存在になっていく。
「目に見えないもの」が、王子さま、「ぼく」(物語の進行役)、わたしたち読者のなかで成長して、物語のさいごに向けて 染み入ってくる不思議な文体で語られていきます。

テグジュペリが描いた可愛いらしい挿絵と、ページ数から、童話と思われがちですが、むしろ大人が読んでこそ、あるいは、何度読んでもそのたびに発見ができる奥の深い物語です。

人と接するときに心の中で思うことは変化する

【相手と接する際の気持ちのあり方】における 設問結果は、関係性と相手に対して思う気持ちがリンクするのは当然の結果であるとお伝えしました。

また当然ながら、関係性が築かれる前の相手は、同僚・近所・単なる知人であり、初対面である知らない人でした。

初めは遠慮する気持ちから出発しても、会って話して気心が知れて、関係性が生まれてくると、
理解されたい、親しみを持ってもらいたいと 気持ちも関係性が生まれる変化が現れるとも言えます。

「星のおうじさま」の中では、王子さまと「ぼく」は、会話をします。最初の印象から、会話を重ねるごとに「発見」が生じていることに「ぼく」は気づいていくのです。

私たちも、接する相手に対して、「発見」を重ね、その発見が自分にとって好ましいものと受け入れられた時、相手に対して『親しみ』という気持ちに変化するのに気づかれるのではないでしょうか。

『親しさ』とは、最初から感じることではなく、育った先にあるものといえます。

なかには、第一印象で互いに距離感を感じなかったこともあるかもしれませんね。

『敬意』と『親しさ』

同僚、仲間、ご近所、今はネット上など相手の顔が見えなくても、継続していく人間関係が築かれていきます。どのコミニュケーションも初対面から始まります。

目の前の人と二度と会わないかもと思える場面でさえ、出来れば友好的なコミニュケーションをと望まれる方のほうが多いでしょう。

その時必要なのは、『敬意』です。

『敬意』とは、文字通り《敬う》ことです。

《敬う》は本来、「尊敬する」ことと説明されますが、コミニュケーションとして解釈する時には、「大事にする」「思いやる」「価値があり大切にすること」も加わります。

相手の何を《大事にする》《思いやる》《価値があり大切にする》のでしょうか。

相手の気持ちです。
相手の立場です。
相手のその時の状況です。
相手の価値観です。
相手のもつこだわりです。
他にどんなことがあなたは思いつきますか?
相手の『    』

「自分のほうが年上なんだから。」「自分のほうが先なんだから。」「自分のほうが偉いのだから。」「そっちから先に敬ってほしい。」

masuda

その気持ちもとてもわかります。優位を示したくなる場合もあるでしょう。けれど、「どやっ」という態度は理由が分からない相手からは、心を閉ざされてしまうかもしれません。

初対面や、関係性が薄い場合の立場はあくまで対等と心がけたいものです。

会話を重ね、柔和な態度で接すれば、警戒心や拒否が薄れてきます。そのうえ、敬意をもって接してもらえていると感じれば、垣根はなくなり、友好的な雰囲気に変化していくでしょう。

それが自分の好ましい『親しみ』へ変化していく可能性が広がります。
双方で『親しみ』を感じられれば、良好な関係へと発展・継続することが期待できます。

一度で築ける関係もあれば、時間がかかる関係もあります。
植物を育てるように人間関係も、芽が出て、成長して、つぼみをつけて、花が咲く。そして次へとつながっていきます。 何かが成長していくのは楽しいことです。

さいごに

『親しみ』に関して別のアプローチもご紹介します。
尊重を重んじるばかりに、いつまで経ってもくだけた感じに進めない。と感じることがあります。

その原因に「言葉遣い」かもしれません。丁寧な言葉は一定の品位、尊敬を現しますが、一方がくだけた感じで話しているのに、一方が尊敬・謙譲・丁寧語では壁を感じることもあります。

双方のバランスが肝になりますが、くだけた表現を用いてみることで、相手との距離感に変化が起こるかもしれません。
ただ、親しさを示そうと いきなりざっくばらんに話し掛けた結果、失礼になってしまったりすることがありますので、タイミングと提案が必要になりますね。

初対面でのいきなりのため口は、特に公の席では控えたほうが無難です。

さいごのさいご

NHK for School (https://www.nhk.or.jp/school/)というサイトに、NHK教育の『おはなしのくに』[Eテレ(月)午前9:05~9:15]のコンテンツがあり、「星のおうじさま」の回もあります。

10分程度にまとめられ、俳優の小池徹平さんが「ぼく」を演じています。
ご視聴はこちらから(https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005150542_00000)。
ラストまで描かれていますが、本文はそれ以上に心に迫る言葉が散りばめられています。

ビジネスライクとして、必要な伝達で終始する場面では『正確さ』や『わかりやすさ』を優先したほうがスムーズにすすめられるでしょう。
※これまでの記事の~第3回・正確さ~~第4回・本来の意味~~第5回・誤解~が参考になります。

今回の質問で、4つの要素として、おさえたいポイント。 意識したい5つの要素から
敬意と親しさ①伝え合う相手との関係を考えているか④互いに遠ざかり過ぎたり近づき過ぎたりしていないか⑤用いる言葉が相手との関係や距離に影響することを意識しているか

出展
文化庁
https://www.bunka.go.jp/
文化庁/「分かりあうための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2018/04/09/a1401904_03.pdf
パンフレット:「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/wakariau/pdf/r1403493_02.pd

『バランス』を成功させるのは、活字で書くほど簡単で、単純ではないでしょう。
言葉や態度で接するコミニュケーションは、あまたの本やアドバイスがあったとしても、全く同じパターンがあるとは限らないからです。
失敗も、ミスもありますが、回避することも、修復することもできます。
本ブログ コミニュケーション内の記事を参考にしてみてくださいね。

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